電話インタビュー:小出裕章さん
聴き手:西谷文和

西谷文和:
さてここからの時間はLight Up! Journalです。元京都大学原子炉実験所の小出裕章さんと電話が繋がっています。小出さん、今日はよろしくお願いいします。

小出裕章:
はい、こちらこそよろしくお願いします。

西谷文和:
はい、小出さん、日本政府はですね、先月26日の関係閣僚会議で福島第一原発の廃炉行程表をまたまた改訂したんですね。見直しはこれで4回目となりますが使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しについて当初の予定から先送りして2023年度を取り出し開始ということになってるんで3年先送りしたんですけれども、小出さんはどう見られていますか?

小出裕章:
国や東京電力はこの事故の被害というものを常に過小評価、過小評価しながら行程表というものを作ってきたのです。簡単に事故の収束ができると彼らは言いたかったわけですし、汚染もそれほどないんだということで行程表を作ってしまったわけですけれども、実際の汚染はもっとひどいし作業は想像していたものよりもずっと困難なので、従来の行程表では到底できないとだんだんだんだん認めてきているということです。

西谷文和:
4号基は取り出せましたけど、1、2、3号基は動いていましたし爆発していましたからかなり放射性物質高いと思いますので、もしかしたら2023年度と言っていますがまだ先送りされる可能性もありますかね。

小出裕章:
もちろんあります。4号基の場合には2011年3月11日に運転していませんでしたので、原子炉が溶け落ちるということは起きなかったわけです。残念ながらというか、爆発が起きてしまったわけですけれども4号基自身の炉心が溶け落なかったために原子炉建屋内部の汚染がそれほど高くなかった。そのためにプールからの使用済み核燃料の取り出し作業ができたということなのですけれども、1、2、3号基の場合にはそれぞれの原子炉が溶け落ちてしまいまして大量の放射性物質が原子炉建屋の中に吹き出してきてしまって汚染をしているわけです。ですからプールの近くに立ち寄ることすらできないという状態が未だに続いていますので、本当にいつになったら使用済み燃料プールからの燃料の取り出しができるか未だによく分からないとそういう状況になっているわけです。

西谷文和:
これ考えたくもないんですが、また何か大きな地震があってこれが崩れたらどうなるんでしょうか。

小出裕章:
そうです。それが一番怖いわけですね。1号基と3号基はもう水素爆発だと私は思っているのですけれどもとにかく巨大な爆発が起きて原子炉建屋が破壊されてしまっていてその中に使用済み燃料プールが今も存在している。そしてその中には大量の放射性物質がまだあるわけですから、これからまた巨大な地震などに襲われて使用済み燃料プールが崩壊してしまう、あるいは崩壊しないまでも水が抜けてしまうようなことがあればまた大量の放射性物質が吹き出してきてしまうということになります。ですからできるだけ急いで本当ならば使用済み燃料プールに埋まっている使用済み核燃料を取り出さなければいけないのですけれどもそれができないという状態になっているわけです。

西谷文和:
使用済み燃料プールからの燃料を取り出すことだけを考えてもなんとなく危険で絶望的な気持ちになるんですが、さらにですね、これが成功したとして最後に燃料デブリを取らなければいけないのですよね?

小出裕章:
そうです。それが一番の難関なのです。

西谷文和:
これについてはどうなるんでしょうか。

小出裕章:
私はそんなことは到底できないとずっと発言をしてきました。

西谷文和:
もう不可能ですか。

小出裕章:
ええ。国や東京電力はとにかくその燃料デブリを取り出して、彼らが言う安全な容器に入れることが事故の収束だと言って、それまでに30年〜40年かかると言うのが彼らの行程表だったのです。ただしデブリを取り出すためには、強烈な放射線が飛び出してきていますので格納容器全体の中に水を張ることで放射線を遮蔽してそれで取り出すという行程表だったのです。

西谷文和:
そうですね。水を満タンにするという話でしたよね。この方式は諦めたようですね。

小出裕章:
はい。なぜ彼らが水を満たそうと計画したかというと、水で満たさないと強烈な放射線が飛び出してきていて作業自体ができないのでとにかく水で満たすという行程表を作ったのです。しかし格納容器はもうボロボロに壊れてしまっていて、これまでにも水を入れてきたのですけども。

西谷文和:
ジャバジャバ抜けてしまってますね。

小出裕章:
はい、もう水が溜まらないのです。ですから水を満たすためにはまずはどこが壊れているのかということを調べなければいけませんし、調べた上でそこを修理しなければいけませんし、また水を入れたらまた多分漏れると私は思っているのですが、またそこを修理しなければいけない。そんなことを繰り返しながらようやく格納容器の中に水が満たせるとしてもですね、格納容器というのはもともと水を満たすなんていう設計になっていないので、そんなことをすればまたそれによって危険を抱えてしまうことになると私は思ってきました。そんなこと結局できないだろうと思いましたし、いちばんの問題は、国や東京電力は溶け落ちたデブリが原子炉圧力容器と言っている容器の真下の格納容器の床の上に饅頭のように堆積しているという想定をしていた。

西谷文和:
はい、私もそういうイラストを見ました。

小出裕章:
でもそんなこと絶対にないのです。私たち原子力発電所の事故を考えてきた人間にとっては、もし圧力容器からデブリが下に落ちてしまうようなことになれば、圧力容器の真下に饅頭のような形で堆積しているなんてことは決してなくて、それはもう格納容器の中であちこちに散らばってしまうというのが私たちの常識だったのです。ですからそうなってしまうと格納容器の中に水を満たして上をのぞいたところで、もうデブリなんて一部しか見えないのです。ですから決して取り出すこともできないのでそんな行程表はもう無意味だと私はずっと言ってきたわけですけれども、結局国と東京電力はそれを認めたということになります。

西谷文和:
ということはですよ、もう回収は無理なので先生がおっしゃっているようにチェルノブイリみたいにこの大きな石の棺桶みたいなもので覆うと、そういう方法の方が有効なんでしょうか。

小出裕章:
はい。私はもうその方法しかないと思っていますし、チェルノブイリの場合には30年までやって30年経って石棺がボロボロになってしまったので、去年の11月にさらに巨大な第二石棺というもので覆ったのです。その第二石棺の寿命は約100年と言われています。ですから結局事故から130年間はなんとか持ちこたえて、そのあとでまたなんとか対策を取ろうということになっているのです。福島の場合もやはりそれをするしかないと私は思いますし、まあ100年持ちこたえることができれば放射線の量が1/10には減ってくれるはずですので、それからなんとかまた方策を考えるというより仕方ないと思います。

西谷文和:
その世代の人がなんとか工夫をするということですね。

小出裕章:
そうです。私たちはもう全員死んでしまっているわけですけれども。

西谷文和:
いませんよね、ええ。

小出裕章:
後の世代に託すしかないと思います。

西谷文和:
最後にちょっと一言だけ。このような状態の中でですね、続々と日本は再稼働へと向かっているわけですよ。このことについて、特にこの選挙において争点になってくると思われますが小出先生、どう思われますか。今の再稼働問題について。

小出裕章:
はい。全く愚かなことだと私は思います。ただしなぜ彼らがそんなことをできるかというと、福島第一原子力発電所の事故でも誰も責任を取らずに済んだからだと私は思います。

西谷文和:
やっぱりそうですね。

小出裕章:
学者も東京電力の偉いさんも官僚も政治家も誰一人として未だに責任をとっていないわけですし、東京電力も今や黒字企業になってしまうという状態なわけですから、もう彼らにとってはどんな事故も怖くないと、誰も責任を取らずに済むんだということで再稼働を進めているんだと私は思います。

西谷文和:
ありがとうございました。Light Up! Journal今日は元京都大学原子炉実験所の小出裕章さんにお話を伺いました。
小出さん、どうもありがとうございました。

小出裕章:
はい、ありがとうございました。