電話インタビュー:小出裕章さん
聞き手:西谷文和

西谷文和:
今日は小出裕章さんと電話が繋がっております。小出さん?

小出裕章:
はい。

西谷文和:
あ、どうも。よろしくお願いします。

小出裕章:
はい、こちらこそよろしくお願いします。

西谷文和:
大阪のスタジオに出てもらうのは本当に久々なんですが、今日は本当に楽しみにしておりました。

小出裕章:
こちらこそ。

西谷文和:
小出さん今日のテーマはですね、「軍事技術と大学研究者について」ということでお願いしたいのですが、このテーマに入る前にですね、先日北朝鮮が核実験を行いましたが、このことについて小出さんはどのように考えておられますか?

小出裕章:
一つですね、まず一番初めにお断りしたいのですけれども、私は北朝鮮という言葉を使わないことにしています。朝鮮民主主義人民共和国という正式な国名がありますし、その国は北朝鮮と呼ばれることを拒否するという風に言っていますので、私自身は北朝鮮という言葉を使わないつもりです。そしてあの国が核実験をしたとかミサイルを撃ったと安倍さんたちが声高に言ってですね、だから危機だからもっとこちらも軍事を増強するとかですね、馬鹿げたことで言えばミサイルが発射されたら地下鉄を止めてみたりですね、とにかく危機を煽るというようなことをやっているわけですよね。それで私自身はそのこと自体がとても間違えたことと思っています。皆さんご存知ないかもしれないですが、挑戦というところでは1950年に朝鮮戦争というものが起こりました。親兄弟親族が戦いあって血を流すという、、、。

西谷文和:
同じ民族がね、はい。

小出裕章:
悲惨な戦争だったのですけれども、その戦争は1953年に停戦協定が結ばれました。ただその停戦協定に署名したのは朝鮮民主主義人民共和国と国連軍を名乗る米軍と、それと中国の義勇軍だけなのです。大韓民国すら署名をしていないという非常に不十分な休戦協定が結ばれただけで、その状態がすでに64年続いているという状態なのです。

西谷文和:
いわゆる休戦状態であるということですよね。戦争は終わっていない。

小出裕章:
そうです。だから戦争はまだ続いているという状態のままきてしまっている訳です。朝鮮民主主義人民共和国は戦争の相手国である米国に対して一貫して、平和協定を結ぼう、休戦協定を結ぼうという提案をしてきたのですけれども、米国は絶対にそれに応じないということをやってきた。

西谷文和:
それもあまり報道されていませんよね。

小出裕章:
そうです。全くもう日本では報道がされないし、誰もが気がついていないのだと思います。そしてその米国という国は自分が気に入らない国があれば地球の裏側のようなところまでも攻め込んで行って、アフガニスタンにしてもイラクにしても国を滅ぼしてしまう、政権を転覆させてしまうということを実際にやってきている訳です。

西谷文和:
大量破壊兵器がないのにあるといったウソをついて。

小出裕章:
イラクの場合はそうでしたね。アフガニスタンに場合にはウサーマ・ビン・ラディーンをかくまったというただそれだけで国を滅ぼすというような事をやってきた国が米国という国なんですね。で、世界一の核兵器保有国であるし、世界一の軍事大国な訳です。そういう国を相手に朝鮮民主主義人民共和国という小さな貧しい国が戦争状態を強制されながらきてしまった訳です。そうなればやられたらやり返すぞと、俺たちだって強いんだぞと言うしかないというそういう状態なのです。

西谷文和:
いじめられっ子状態になっているという事ですよね。

小出裕章:
そうですね。ですから私はもう挑戦という国が核実験をしたとみなさん思っていますけれども、ひょっとしたらそれは嘘かもしれないぐらいにしか信じていないのです。とにかく自分が強い強いと言わざるを得ないまま64年間きた国であると、その事をみなさん知らなければいけにし、朝鮮半島の分断ということに誰よりも責任があるこの日本という国は分断を解消させる、戦争をやめさせるということに力を尽くすべきだと私は思いますが。あらゆる選択肢があるなんていう事を言って米国と一緒にとにかく制裁を加えるというような事を言っている訳ですね。本当に情けない国だと思います。

西谷文和:
小出さんは前から北の持っている原発が非常に小さいもので、日本とか世界標準に比べたら、もうこれはプルトニウムも作れたとしてもしれているのではないかとおっしゃっていますが。

小出裕章:
私は京都大学原子力実験所という職場に長い間働いていました。その職場には実験用な小さな原子炉がありました、それは5MWという(規模のものです)。それで朝鮮民主主義人民共和国にあるのはその5倍の25MWという小さな原子炉しかないのです。普通の原子力発電所に比べれば1/100というような本当に無茶なような原子炉しかなくて、それをどんなに動かしてプルトニウムを作ったところでしれている訳です。作ったプルトニウムを取り出す再処理工場というものも正式なものがまだありませんので、おそらく朝鮮民主主義人民共和国で原発というものは作れないだろうし仮に作れたとしてもほんのわずかであって膨大に持っている米国なんかに比べればほんのわずかだと私は思います。

西谷文和:
日本と比べても日本は40何トン持っている訳ですから。

小出裕章:
そうです。日本は48トンのプルトニウムを持っていて長崎型の原発でよければ4000発も作れてしまうというほど日本は持っている訳です。

西谷文和:
逆にいうと日本やアメリカは北朝鮮側から見ると恐ろしいですよね。そんな原発を持ってる訳ですからね。

小出裕章:
はい。

西谷文和:
だからそういう意味では安倍内閣がJアラートを流して、そして地下鉄を止めても地上の電車は動いていましたよね。

小出裕章:
全く馬鹿げた事ですよね。本当に危機を感じるのであれば原子力発電所を止めるのが一番大切な事なのですけれども、そんなことは全然やらないまま、とにかく朝鮮が悪い、朝鮮が悪い、危機だ、危機だと言って煽っている訳ですね。

西谷文和:
コマーシャルまで作るくらいですからね。本当にひどい話だと思うんですけれども、最近では北朝鮮の核実験で一色になっちゃった訳ですが、そういう風に冷静に判断しなければいけないということがよく分かりました。それと間接的に絡むのですけども、こういうことを煽ることで軍事費が伸びていますが。

小出裕章:
どんどん伸びていますからね。

西谷文和:
どんどん伸びてますよね。戦前の反省からですね、日本学術会議、まあ研究者は軍事研究には協力しないと言っているんですが、北朝鮮の問題を利用して軍事研究を始めようとしているようなことがあるんですが、それに関してはどのように思われますか。

小出裕章:
そうです、防衛装備庁が大学の研究者たちを中心に軍事費を出すから協力しろというようなことを言い出しているわけですね。日本学術会議がそのようなことは本当はやらない声明を出したわけですけれども、研究者という人たちは往々にして金さえがもらえればそれが一番だと考える人が多いのです。いわゆる技術・科学などそういうものには平和目的とか軍事目的とか本当はそんなことないのです。ですからあらゆる科学、あらゆる研究というものが軍事的に使えてしまうというそういうものなのですけれども、だからこそ研究者は軍事研究にできる限り協力しないという心構えが必要なはずなんですけれども、それをどんどん取っ払っていて研究者たちを軍事研究に囲い込もうというそういう動きが進んでいると。

西谷文和:
2016年度は6億円だったのが2017年度は110億円ってものすごい増え方ですもんね。

小出裕章:
そうですね。そうなると残念なことではあるのですけれども、研究者っていうのはとにかく金が欲しいていうことでそちらの方向に流されて言ってしまうというのが核の歴史でもありました。

西谷文和:
それにまた加えて大学を独立行政法人にして、要は予算を削っているところにありますからね。

小出裕章:
そうです。どんどんどんどんいわゆる国が提供するお金が減ってきて自分が稼げという方向に誘導しているわけでそういう時に軍事研究のためのお金が出てきてしまうとそれにやはり流されていってしまうことになると私は思います。

西谷文和:
それで小出さんがさっき仰ったように研究・科学というのはいわゆるデュアルユースですよね。軍事でも民政でも使えるからそこに口実をつけて、例えばインターネットとかカーナビは本来は軍事技術で開発したものなんでしょ?

小出裕章:
そうです。

西谷文和:
私、シリアに行った時ね、ミサイル飛んでくるんですけどやっぱりGPSで飛んでくるんですよ。何で飛んでくるかっていうとそこの自由シリア軍の幹部の携帯電話の番号がバレたからその携帯電話の番号で位置情報を掴んで当ててくるんですよ。ものすごいなと。今はもうそんな世界ですから、もう無人でも飛ばしますしね。そういう意味ではドローンはAmazonが配達すると行っていますけど元々は無人戦闘機で人を殺すために開発されたものですもんね。

小出裕章:
そうですね、はい。

西谷文和:
だいぶ前に小出さんが仰ってたんですけど、確かインドのガンジーですかね、「人格なき、、、」何とかって仰ってたじゃないですか。あれ研究者は倫理観とか平和の目的っていうものを常に持っとかないとやっぱりダメですよねえ。

小出裕章:
はい、そう思います。

西谷文和:
ナチスで、粛々とユダヤ人を殺した人がいて、それについてハンナ・アレーレントでしたか言ったのは、いわゆる業務・命令に忠実に従っているだけではダメだということでしょうね。

小出裕章:
そうですね、いわゆる思考を停止してしまうことが罪なんだとアーレントは言ったわけですね。とにかく上から言われたらそれに従えばいいというそういうやり方で生きる、そのこと自身が間違えてるということだと思います。

西谷文和:
東京電力の方とか原子力規制委員会の方とかに聞いて欲しいようなお話ですが、やっぱり人間としてどういう研究をするかという原点に戻らないとやっぱりダメですね。

小出裕章:
そうですね、一人一人が自分の責任というものを自覚しなければいけないのだ
と思います。

西谷文和:
はい、小出さんどうもありがとうございました。

小出裕章:
こちらこそありがとうございました。