電話インタビュー:今中哲二さん(京都大学原子炉実験所・研究員)


西谷文和:
今日は、今中哲二さんと電話が繋がっております。
今中さん、今日は宜しくお願いします。

今中哲二さん:
はい、こちらこそ宜しく。

西谷:
はい、お願いします。
今日はですね今中さん、テーマは『福島の避難解除について』なんですけども。
この原発事故で今年の春ですね、3月末までに帰還困難地域以外の全ての区域でこの非難が解除されると。

今中さん:
そうですね、はい、

西谷:
福島県の川俣、浪江、富岡の3つの町と飯館村が解除されるということなんですが。

今中さん:
いわゆる居住制限区域だったとこが全部解除されますね。はい。

西谷:
これね、今中さんは飯館村へいち早く行かれて。私も行ったことあるんですけど。

今中さん:
そうですね。はい。
飯館村も行ってきましたし。はい。

西谷:
この状態で帰れるんでしょうか?

今中さん:
私いつも言ってることは、帰るか帰らないかというのはそれぞれの人の判断なんですよね。はい。
原発事故が起きた時に、枝野さんが言ってたけども、今の状況というのは当時とは別で、
すぐに病気になるようなもんではありませんと。

西谷:
よく「直ちに」というのがね、流行語になりかけてましたもんね。はい。

今中さん:
結局、だけども帰ったら被ばくしますと。
それで、結局その辺で被ばくをすることと、出来るだけ被ばくは避けた方がいいという事と、
それぞれの人がどっかで折り合いつけざるを得ないんですよね。

西谷:
例えばですね、もちろん帰れたら喜ばしいんですが、そこはまだ汚染されてるということですけど。
飯館村へ行った時にですね、もうフレコンバックですか。黒い除染のね。

今中さん:
ええ、もう酷いですね。ほんとに。

西谷:
あの姿を見てたら、故郷がもうなんかこう汚されてるっていう風に見えちゃうんですけど。
現時点でやっぱり、そのあれですよね、よく言われるのは1ミリシーベルトを20ミリに変えたんですが、
これ1ミリやったら、もう絶対超えてしまいますよねえ。

今中さん:
私ども去年から、だから「そのうち避難指示解除になるぞ」というんで飯館村の地区の人に手伝ってもらって、
協力してもらって、いろんな家の周り計ったりしてきたんですよ。

西谷:
やっぱり、去年から今年にかけてそういう事やられてるんですね。

今中さん:
そうです。200軒ぐらい周らせてもらって。
それでね、今の飯館村の除染した後の放射線レベルですけども、1時間あたり0.5マイクロシーベルトから1マイクロシーベルトです。
家の周りがね。
それで、そこに帰って、その周りだけで暮らしてた時には、大体1年間で2ミリシーベルトから5ミリシーベルトぐらい。
そういうんでは、そうべらぼうに高いわけではありません。

西谷:
だからですね、その人の判断だろうと思いますけど。

今中さん:
で、私いつも言ってるのは、お年寄りなんかね、もう仮設住宅で5年も6年も閉じ込められてるような生活してる人が
「帰りたい」とおっしゃる時には、もう早く帰してあげたらいいんじゃないのというのは前から言ってました。

西谷:
例えば、小さなお子さんについてはどうでしょうか?
その判断でしょうけど。

今中さん:
小さい子供さんには被ばくの影響、低レベル被ばくの影響でよく分からない所がありますから、お薦めはできません。

西谷:
お薦めできないと。

今中さん:
はい。

西谷:
そんな中で、政府がこの避難解除をなんか早め早めに推し進めてるような気はするんですけど。

今中さん:
それは皆さん感じてるように、出来るだけ早く福島には蓋をしてという動きはありますね。

西谷:
やっぱりそこですね。やっぱり、その賠償の費用がかさむという事や。或いはやっぱり。

今中さん:
というか、東京オリンピックもあるし、「原発事故、はい終わったぞ」という事にしたいんだと思いますよ。

西谷:
完全にコントロールされてるとか言うてましたからねえ。安倍さんはねえ。

今中さん:
はい。私からしたら、別に避難解除そのものに反対という意見は持ってないんですよ。私は。
ただね、今お話したように、帰る、帰らないはその人の判断ですけども、
今やられてる政策というのは、無理やり帰そうとしてるんですよ。

西谷:
なるほど。帰りたくない人も「帰った方がいいよ」と言われてるわけねえ。

今中さん:
はい。今、避難してる人の生活というのは、それなりに保障なり手当でしてるわけですけども。
「戻らない人も、それも打ち切っちゃうぞ」とという話なんですよねえ。

西谷:
これ、だからつまり今やったら、その避難者は住宅があるけれども、この住宅支援を廃止する言うてるんですよねえ。

今中さん:
はい。おまけに飯館村でしたら、要するに、避難指示区域以外の所で学校開いてたのを、
村の中で学校を全部移すぞという形にして。

西谷:
ということは、飯館村に帰りたくない人が、子供さんがいたとしても、学校がなくなっちゃうわけですか?

今中さん:
そうです、はい。
「だったらよそに転出して、他所の学校に行きなさい」というような政策ですよね。

西谷:
ただでさえね、その例えば福島出身の子、いじめられたりしてるじゃないですか。
だから、今せっかくね、その避難所の所でコミニティができて、
子供さんが何とか行ってる、その小学校を無理やり飯館村に返すわけですか?

今中さん:
そうです。

西谷:
それはしかし、なんかその痛みを寄り添ってないような気がしますねえ。

今中さん:
ですから、飯館村の人なり避難してる人、自主避難してる人も含めて、被害者・被災者なんですよね。

西谷:
そうですよ。

今中さん:
で、被災者がどういう選択をするかについて、国や東電はきちんと面倒を見る責任があるんですよ。

西谷:
もちろんそうです。
国や東電がやってきてこうなった訳ですから、加害者はあくまで国や東電ですもんねえ。

今中さん:
で、なんで被災者が苦しむようなことをやらなきゃいけないのか。

西谷:
加害者がねえ。

今中さん:
はい。被災者の方が苦しむわけですよ。

西谷:
これは・・・。
そして、その中で「東京オリンピックだ!」言うてお祭り騒ぎをするということは、
これ飯館村とか川俣町の人から見れば、「何をしてるんかなあ」という感じはするんですよねえ。

今中さん:
やっぱり出来るだけ都会の人、東京・大阪の人も含めて、やっぱり福島の現状というのを
自分の目で見るなり、いろいろ知ってもらって考えてもらいたいと思いますねえ。

西谷:
もう6年経ったじゃないですか。
この6年間をちょっと振り返ってみて、今中さんはどう思われます?
全然変わってないですか?
状況は。

今中さん:
福島についてですか?

西谷:
そう。
飯館村とか、そういう所の状況について。

今中さん:
だから、去年でしたかね、私あるシンポジウムで飯館村の人から聞いたんですけども、最初は被災者だと。
それで、そのうちもう難民になりましたと。
今度からは、ものすご棄民ですと。捨てられた人々ですと。

西谷:
なるほど。もう難民でさえないということですか?

今中さん:
そうですねえ。はい。
もう村に戻らないヤツは、もう村人ではないというような感じになってくるんじゃないですかねえ。 

西谷:
本当になんか、なんと冷たい政府かという気がしますけども。


今中さん:
ですから、それぞれの被災者の選択に対して、
もっとフレキシブルに政府なり行政がケアしていく体制を作っていかなきゃいけないと。

西谷:
なるほど。つまり、こういう事ですね。
その避難を解除することそのものよりも、むしろその一人一人の被災者のニーズとか要望をもっと詳しく聞き取って、
その一人一人の要望に沿った形で解決をする。

今中さん:
そうです。上から「こうしましょう、ああしましょう」と下りていくんではなくって、
人々の要望を聞いて、それに合わせて政治なり行政が動いていくと。

西谷:
10人おられたら、10人それぞれ違いますもんねえ。

今中さん:
はい。

西谷:
よく分かりました。今中さん、どうもありがとうございました。

今中さん:
はい、どうも。