西谷文和:
今日は、今中哲二さんと電話がつながっています。今中さんよろしくお願い致します。
今中哲二さん:
はい、こちらこそよろしくお願いします。
西谷:
今中さん、ちらっとお伺いしたのですが、この夏ウクライナに行ってこられたということですよね?
いつから?
今中さん:
そうですね。先月の末というか、23日に出て……
西谷:
はい。8月23日。
今中さん:
1週間ほど行って、31日に帰ったんですよ。
西谷:
そうなんですか。チェルノブイリに行かれましたか?
今中さん:
そうですね。チェルノブイリと、あと汚染地域とね、ぐるっと10人ぐらいで周ってきました。
西谷:
今はどんな感じでした?
チェルノブイリは?
相変わらず?
今中さん:
30年経っていますからね。
ある意味では落ち着いてるし、ある意味では汚染がずっと続いていると。
それで、病気が増えていると言う人もいるし、大して変わりはないと言う人もいるし。
西谷:
ウクライナもですね、チェルノブイリの事故があったのに、まだ原発をやっていますよね?
今中さん:
はい、そうですね。
西谷:
あれは、どうして止めなかったんですかね?
今中さん:
彼らは、やっぱり電気が圧倒的に足りないという意識があるみたいですね。
と言うのは、もともとロシアからエネルギー供給してもらってますから。
西谷:
そうですね。
今中さん:
そのロシアと今、仲が悪い状態なので。
西谷:
今、戦争してますからねえ。
今中さん:
ええ。あれで、ロシアから供給止められたら電気が足りなくなると。
その点、日本とは全然違いますね。
西谷:
なるほど。本当なら再稼働、ウクライナの人も危険だと思っておられると思うんですが。
今中さん:
そうですね。
ほとんどの人は、必要枠という言い方をしますね。
西谷:
そうですか。私もキエフに行きましたが、2年前。本当にきれいな街でね。
今中さん:
そうですね。
西谷:
京都と姉妹都市なんですよね。歴史がね。
今中さん:
そうです。
西谷:
そういう所に、まだ原発の傘下があるということですが。
今日のテーマはですね、今中さん、九州電力と知事の関係なんですけどね。
鹿児島県の三反園知事が、「川内原発を一時停止しろ」と要求していたわけですが、
九電は「定期検査中に確認する」と言う。
だから、「停止しない」と言ったんですよね。
まず、ここからお伺いしたいのですが。
知事がこういうこと言ったら、普通、もっと真摯に対応してもいいと思うんですが、
今中さんはどう思われますか?
今中さん:
たぶん知事さんには直接的な権限がないですから、
やっぱり九州電力としては素直にいうことは聞かないと。
西谷:
1号機が10月6日から定期検査、その間、運転停止ですよね。
2号機も12月に2ヶ月定期検査に入る予定ですから、このままいけば一旦止まるわけですよね?
今中さん:
そうですね。
一旦止まって、また動かすかどうかという時に、やっぱり地震の問題でしょうね。
確か、川内はいわゆる重要免震棟を造らずに再稼働に入っていますよね。
福島の場合は、福島の事故であの程度で済んだというのは、
ある意味で、重要免震棟というのが柏崎の地震の後に色々検討して、
とにかく福島の事故には間に合ったと。
あれが無かったら、結局、現場の作戦、指揮所がありませんから。
西谷:
ですよねえ。
今中さん:
ええ。もっと大変なことになっていたと思いますよ。
西谷:
これ、川内原発は無いんですよね?
九電は造らないということにしましたからねえ。
これ、とんでもないことなんですが、
そもそもの話だけちょっと、もう一度確認したいのですが、
やっぱり、この原発というのは、人口密集地からは遠くに建ててますよね?
今中さん:
はい。
西谷:
国策でありながら、「避難計画を国は策定しろ」と言うだけで。
結局、規制委員会も「計画を作れ」と言いながら、これを審査する立場にないという。
今中さん:
そうですよね。逃げてますよね。責任回避ですよ。
西谷:
これ、だから、誰が責任者か分からないですよ。
今中さん:
それは、もう日本の原子力開発が始まってからの伝統みたいなもんですねえ。
西谷:
これ伝統にしてもらったら困るんですけど。
今中さん:
困りますよねえ。
西谷:
これ、住民の安全が一番だと思うんですけどねえ。
今中さん:
はい。ですから、私がいつも言っているのは、
結局、事故が起きたら、周り30キロの人が避難しなきゃいけない。
そういったものを使ってまで電気を作る必要があるのかと。
西谷:
今余ってますよ。
今中さん:
この前、私ちょっと調べたんですけども、
最近、節電しろとか節電という話が全く出ないんで、
いろいろ調べたら、とにかく発電能力は余っていると。
西谷:
そうですよね。むしろ、そのハッピープランとか「夜間も使え」とか言ってますよね。
今中さん:
そういう状況の中で、なんで原発をまだ動かさなきゃいけないのかというのが私の基本的な疑問ですね。
西谷:
私もその通りだと思います。核のゴミも出ますしね。
はい、よく分かりました。
今中さん、どうもありがとうございました。
今中さん:
どうも、こちらこそ。
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小出裕章・こいでひろあき
1949年生まれ。日本の工学者(原子力工学)。元京都大学原子炉実験所助教。原子力の平和利用を志して1968年に東北大学工学部原子核工学科に入学するも、放射能被害の実態を知り原子力に反対する立場を取り始める。女川原発の反対運動、伊方原発裁判、人形峠のウラン残土問題、JOC臨界事故など、放射能被害者の側に立って活動、原子力の専門家としてその危険性を訴え続けている。主な著書に『原発のウソ』(扶桑社新書) 、『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』(毎日新聞出版)など。
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今中哲二・いまなかてつじ
1950年生まれ。日本の工学者(原子力工学)。京都大学原子炉実験所助教 兼 京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助教。瀬尾健とチェルノブイリ原子力発電所事故後の追跡調査を中心に活動した。工学修士。広島県出身。熊取六人衆の1人。
主な著書に『Silent War 見えない放射能とたたかう』(講談社)、『低線量放射線被曝――チェルノブイリから福島へ (叢書 震災と社会)』(岩波書店)、共著に小出裕章、久米三四郎ほか『 「原発の安全上欠陥」原子力技術研究会』(第三書館)など。