おしどり:
小出先生、先月27日に茨城県で震度5弱の地震があった時、原子力規制庁からの緊急速報メールで「すべてに影響はない」と情報がすぐに来たんですけども、
そこに列挙されていた北関東と東北地方の原子力関連施設の多さにすごい驚きました。

小出裕章さん:
そうですね。

おしどり:
はい。本当に。でも私達、東京に住んでいる人間は、3.11の後どうしても北の方に目を向けがちなんですけど、すぐそばには中部電力の浜岡原発があるですよね。

小出さん:
そうですね。

おしどり:
中部電力は、静岡県御前崎市にあるその浜岡原発の安全対策工事の工期を延期する方針を固めたようです。
延期は5回目ということで、今回は初めて完了時期の設定も見送るということですが、これは計画も進捗もいい加減ですよね。

小出さん:
そうですね、私もそう思いますが、ただ皆さんもう一度基本的な所に戻って考えてみてほしいのですが、日本というのは世界一の地震国なのですね。

おしどり:
本当に。

小出さん:
そして、地震なんていうものを誰も願いはしないけれども、でもある時突然襲ってくるわけです。
そして残念なことに、天災は忘れた頃にやって来るとずっと言われてきましたけれども、地震はいつやってくるというような予知ということは、これまでできた試しが一度もないのです。
ただし、この日本という国が世界一の地震国だと言っても、地震の起きやすい場所というのはもちろんある訳で。
例えば、世界中の地震学者が「近い将来に必ず東海地震が起きるだろう」と言っている訳です。
日本列島の南側には、南海トラフという巨大な地震域があるのですけれども、その地震域では南海地震・東南海地震・東海地震という地震が古文書をひもとくと、約100年から150年ごとに起きてきたということがはっきりと分かっているのです。

おしどり:
はい。

小出さん:
そして、東南海地震も東海地震も1854年の安政でんかんの時に起きました。
そして東南海地震の方は、1944年つまり90年経って起きているのですけれども、いわゆる東海地震というのは1854年以降、もう162年起きていないのです。
それだけ地震を起こすひずみが溜まっているということで、いつ起きても不思議でないという地震なのですが、その予想されている東海地震の予想震源域のど真ん中に浜岡原子力発電所が建っているのです。
もともと、こんな事はしてはいけなかった訳ですし、中部電力の方もおそらくこの事の重大性ということに少しずつ気がついて来ているのだと私は思います。
本気で彼らが浜岡原子力発電所を再稼働させる気があるのかどうなのかという事も今となってみると、かなり疑問なのではないかと私は思っていますし、
それが工事の遅れ、あるいは完了時期の設定も見送るということに繋がっているのではないかと私は思います。

おしどり:
なるほど。でも、100年から150年にいっぺんの地震がとっくに150年を超えてるというのは、次来るのは今までよりずっと大きい地震かもしれないということですもんねえ。パワーが溜まっていて。

小出さん:
ですから、東海地震、東南海地震、南海地震というのは個別に1つずつ起きたこともあるわけですし、3つがいっぺん同時に動くこともあったわけです。
もし本当に、3つが同時に動くようなことになれば、マグニチュード9というような2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震と同じような巨大地震が起きると、地震学者が予想しているわけですし、
それがなんと浜岡原子力発電所の直下で起きるという、そういうことになっているわけです。

おしどり:
うわぁ。すごいことですよね。小出先生これまで浜岡原発、どんな経緯で延期が続いたのでしょうか?

小出さん:
もともとは、2011年3月11日の福島の事故が起きてから、当時、菅さんという方が首相をしていたわけですが、菅さんがとにかく浜岡だけは止めようとして動いた訳ですね。
そして、「津波でやられるといけないから防潮堤を作れ」と「そうじゃなければ止めろ」と言っていたわけです。
それで、中部電力もそれを受けて止めて、とにかく防潮堤を防波堤と言うんでしょうか、それを作ると言ったわけですけれども。
その防波堤がなんとも巨大なもので、もともと高さが18メートルというような、普通だったらありえないような壁をですね、浜岡原子力発電所の目の前の海に全部作るというそんな約束をしてしまったわけです。
ですから、もともと工事自身が大変でしたから、思ったよりも時間がかかるということで、1回目の延期がありましたし、その後は18メートルでは足りない、もっと高くしなければいけないということで、また延びましたし。
そうこうしている内に新規制基準というのが出来てしまいまして、地震の揺れの大きさをどうやって考えるかということが、昔とはずいぶん変わってきているわけです。
その度に、中部電力の方は見直しを迫られるということになってきたわけですし、先ほど聞いて頂きましたように、中部電力自身がもうこれは止めたほうがいいのではないかとだんだん思い始めているのではないかなと私は思います。

おしどり:
防波堤が22メートルというのも、ちょっと想像がつかないですよね。

小出さん:
マコさん、ケンさんも見に行かれたそうですけれども、私も見に行きましたけれども、なんか漫画のような壁ですよね。

おしどり:
いや、本当に。

小出さん:
確かに高いけれども、本当に津波が来て、こんなものがポタッポタッと倒れないかというような壁が、今、原子力発電所の目の前の海にそそり立っているというようなそんな状況になっています。

おしどり:
イタチごっこと言うか、津波が来る、地震が来るかもしれない、津波が来るかもしれない、壁を作らなくてはいけない。
じゃあ壁を作ろう、じゃあ高さが足りない、もっともっと作ろうみたいな。
なんかそれで、どんどん延期していって計画が遅れていますって言う。
なんかお聞きしてると、計画が凄いずさんなように聞こえるんですけど、なんでこんなことになってるんですかね?

小出さん:
もともと原子力発電所の事故の歴史というのを見てもらえば分かって頂けるかと思うのですが、当初は、こんなんでいいだろうと思ってやっていたことが、
次々と、「やはりダメだった」と「もっと厳しくしていかなければいけない」というような歴史をずっと辿ってきたわけです。
地震に関しても、予想していた地震度の大きさ、もうこれ以上のことなんて考えなくてもいいと言っていたような大きさが、次々と乗り越えられてしまってきたというのがこれまでの歴史でしたので、
科学というものはそんなものだと思って頂くしかないだろうと私は思います。

おしどり:
そうですね。今、どの学問も完成形ではなくて、まだ発展途上という事で、今の最新というだけであって、それが完全というわけではないですもんね。

小出さん:
もちろんそうなのです。科学というのは、もともと未知の物を知りたいということで始まっているわけであって、
完全に分かるなんてことは絶対にそれこそない訳であって、分かれば分かるだけ、また別の事が見えてきてしまうわけで、これからもそういう歴史が続くと私は思います。

おしどり:
私、以前、全然関係ないですけど、東京電力が福島第一原発の地下水の汚染を調べてた時の言葉を思い出しましたよ。
地下水の汚染を調べて、どこから何が漏れているのか東京電力が調べた時に、
たくさん井戸を掘って、その汚染水の流れを調べた時に、もの凄い哲学的なことを言ってたんですよね。東京電力が規制庁の発表で。
「調べれば調べるほど分からないということが分かりました」と発表してて、それを思い出しました。

小出さん:
非常に正直な科学的な発言だと私は思います(笑)。

おしどり:
そうですよね、そういうことですもんね。
でも、その原子力というのは未知の物であっても、できるだけ完全と言うか、
万一のシビアな状況をできるだけなくすというものなのにも関わらず、
「いやぁ、未知なもので、完全ではないですから」と言うのは、なかなか怖い発言方法ですよね。

小出さん:
そうですね。
でもそれは、例えば原子力規制委員会という所が新規制基準への審査というのをやっていて、
これまでに九州電力の川内原子力発電所、関西電力の高浜原子力発電所、四国電力の伊方原子力発電所に、
規制基準に合格したというお墨付きを与えたわけですけれども。
その度に、規制委員会の委員長である田中俊一さんが「合格したからといって安全だとは申し上げない」と言っているわけであって、
科学的に分からないということは必ず残っているということは彼自身も認めている訳ですし、
科学というものはそういうものだと、皆さん了解していただくしかないと私は思います。
ただし、こと原子力発電所に限ってはそんなことで了解できるようなものではないわけですから。
私は何よりもまず科学的に物を考えるなら、原子力というのは止めるべきだと思います。

おしどり:
なるほど。わかりました。ありがとうございます。
でも、よく考えてみたら、その原子力規制委員会というのは地震のご専門ではないけれども、地震と原子力のことを判断していってるというのは、よく考えたらちょっと怖いことですよね。

小出さん:
そうですね。ただ、原子力というのは、非常に広汎な技術の上に乗っていますので、
原子力規制委員会の委員というのはたった5人しかいないわけなんですけれども、
その5人ではもちろんこぼれ落ちる所はもうそこらじゅうにあるということだと思います。
ただし、今、マコさんがおっしゃったように、地震というものに関して専門家がいないということは、やはり由々しき事だと私は思いますし、
原子力発電所にとって、特に日本の原子力発電所にとって地震は最大の脅威なわけですから、ちゃんとした審査ができるようにしてほしいと思います。

おしどり:
なるほど、ありがとうございます。
熊本地震の後、福島県の農民連の方々が100人ぐらい政府交渉があった時に取材に行ったんですよね。
福島の農家の方々が熊本地震の後、「もう川内原発を止めてほしい」という要望を原子力規制庁に出していたんですけど。
それを原子力規制庁は、「新規制基準をクリアしているので大丈夫です」ということを福島の農家の方々にお話をしていて、
それを俺達の前で言うのかっていう。
自分達は犠牲者だから、これ以上増えないように話をしに来たということだったんですけど。
お一人の農家の方がとても周知の事をおっしゃってらしてね。
「熊本地震は地震学会でも気象庁でも今後予測がつかないと言っているのに、なんで原子力規制庁は予測をつけるんだ」と怒っていて。

小出さん:
その通りですね。

おしどり:
いや、本当にその通りだと思いました。小出先生、今日もありがとうございます。

小出さん:
いえ、こちらこそ。
ご活躍いつもありがたく思っています。これからもよろしくお願い致します。

おしどり:
こちらこそ、よろしくお願いします。