おしどり:
今日はですね、伺いたいことなんですけど、ワシントンで4月に開かれた核安全保障サミットで、
安倍総理は京都大学原子炉実験所の学生訓練用の原子炉「京大臨界集合体実験装置」で使用してきた
高濃縮ウランを全量撤去する方針を明らかにしました。

小出裕章さん:
はい、私がいた京都大学原子炉実験所にはKUR、つまり京都大学原子炉という、いわゆる原子炉ともう一つ臨界実験装置という、
ほんとのおもちゃのような小型の原子炉があったのです。
KURという原子炉の方は1964年から動き始めましたし、
臨界実験装置というほんとに小ちゃな原子炉の方は1975年から動き始めてきたのです。
それぞれ、いわゆる研究用に全国の大学の研究者が使う、或いは学生の教育に使うということでやってきたのですが、
その燃料というものが、93パーセント高濃縮ウランというものを使っていました。

この番組をお聴きのリスナーの皆さんは多分ご存知だと思いますが、ウランというものには2種類あるのです。
核分裂をする能力を持っているウランと、核分裂をする能力を持っていないウランというのが2つありまして、
核分裂をする能力を持ってるウランは出量数が235、能力を持っていないものは出量数238というそういうウランなのですが、
天然のウランを掘ってくると、核分裂をする能力を持ってるウランがが0.7パーセントしかないのです。
ですから、その全体のウランのうちのわずか140分の1、或いは150分の1しか核分裂する能力がない。
つまり“燃えない”ということなのです。

もともとそのウランというのは、原爆を何とかつくれないかという事で利用されたわけですけれども、
全体の中で0.7パーセントしか燃えないというそんなウランだったら、原爆できなかったのです。
火を点けるためには燃えるウランを集めてこなければいけないということで、その操作を濃縮と私達は呼んでいるのですが、
その操作が物凄く大変だったのです。
でも、米国は原爆をつくりたいということで、必死の努力をしたあげくに原爆をつくりあげたわけですね。
要するに、燃えるウランをとにかく集めるという作業をやって原爆をつくりました。
通常、私達の常識で言うと、原爆をつくる為には燃えるウランの濃度が90パーセントを超えていないといけないというのが、私達の常識なのです。
それで、うちの原子炉、或いは臨界実験装置というので使っていたのが93パーセント高濃縮ウランというもので、
つまり、すぐに原爆がつくれちゃうというそういう材料を使ってきたのです。

米国という国もそういうウランを他国に渡しておくというのは、やはりまずいということにある時点で気がつきまして、
もともと米国がうちの原子炉もつくって、燃料と一緒に提供してくれたわけですけれども、
やはり日本という国に高濃縮のウランを渡しておくことはもう止めようということで、
原子炉用の高濃縮ウランはもうとおの昔にもう日本にくれなくなったのです。
うちの原子炉実験所の原子炉は、確か2000年頃だったと思いますが、
要するに、燃料が無くなってしまって止まってしまったんです。原子炉そのものが。
それで、原子炉の方は、燃料がなくて止まっているのでは困るということで、20パーセント濃縮ウランでも動くように、
若干の改造をしまして、ようやくまた再稼働をさせたということだったのです。
そしたら、福島の事故が起きまして、もう一度審査をやり変えない限りは動かしてはならないということで、
また止まっていたわけですが、そちらの方は、一応はクリアをしたということになったわけです。

ただ、臨海実験装置の方は、ずーっとまだ93パーセント高濃縮ウランというのを使い続けてきていたのです。
そちらの方は、やはり米国が「もうこの際だから返せ」ということで、たぶん今度の合意になったのだと思いますし、
京都大学としては93パーセントではなくて、例えば20パーセントの濃縮ウランにして、臨海実験装置も動かすというそういう選択をしたのだと思います。

おしどり:
なるほど。なんか凄く、その実験装置の歴史がよく分かりました。ありがとうございます。
あと小出先生に伺いたいんですけど、京大の高濃縮ウラン93パーセントでも20パーセントでも、
そのウランは、テロリストとかに狙われる危険っていうのはあるんでしょうか?

小出さん:
皆さんが、そのテロリストという人をどういう人にイメージしているか、私はよく分かりません。
私自身は、テロリストと名付けられるような人達が原爆をつくって、それを使用するという風には私は思っていないのです。
ただし、米国であるとか日本であるとか、いわゆる国家として原爆、
米国なんか実際に持ってるわけですし、実際にもう使ったわけですけれども、
そういう国の方から見ると、テロリストというようなものが原爆を持ったら大変だということを恐れるということは勿論あるわけで、
テロリストに原爆材料を獲られないように、何としても管理をしなければいけないということで、ずーっとやってきているわけです。
米国だったら、原子力発電所は軍隊が守ってるというそんな状態になっているわけですが、
日本の場合にはこれまでの所、原子力発電所を自衛隊が守るということもないわけですし、
京都大学原子炉実験所の原子炉を自衛隊が守るということも実際にはまだないのですね。

でも、米国の側からすれば、「とにかくもっと厳しく管理をしなければいけない」と日本に言ってきたわけですし、
日本も着々とテロリストというものは危ないからというそういう理由で、
原子力発電所であるとか京都大学原子炉実験所の警備というものをどんどんどんどん強化してきたのです。
京都大学と言えば大学ですから、本当であれば、一般市民だって自由に大学校内に入れるというのが本来の在り方だと私は思うのですけれども、
京都大学原子炉実験所は、もう校内に普通の人が立ち入ることすらが物凄く難しい。
職員であっても、守衛が正門を入る時に身分証明書を見せない限りはもう校内に入れないという。
それ程厳しい警備にどんどんなってきたのです。
だから私としては、大学という組織がそんなような事になるのは私は反対ですし、原爆材料がある、そして、それをテロリストが狙ってるという、
その理由で大学の自由というようなものを拘束してくるというようなことに反対ですので、
もう高濃縮ウランなんて、むしろ持たない方がいいんではないかと私自身は思ってきました。

おしどり:
わぁほんとだ。おっしゃる通りですね。
私もほんとに大学は自由な所であって欲しいし、あとそれとアメリカが原爆を落とすのはテロではないけど、
なんか非政府組織であればテロですっていうのは……。
そういう考え方ですよね? ほんとに。

小出さん:
はい。極めておかしなレッテルの貼り方だと私は思ってきました。

おしどり:
ほんとだ。おっしゃる通りだと思います。
でも、小出先生ね、この間、伊勢志摩でサミットがあった時に、福島第一原発はその期間中、作業を停止したんですね。

小出さん:
そうですね。

おしどり:
それについて、いろいろちょっと取材をしたり調べていったんですけど。
日本の各セキュリティというのは、元々とても甘いということを原発事故前から指摘されていたということを知りまして。
それで、今、福島第一原発では毎日7千人程度の作業員の方々が作業されてますけど、
とても身分証明が割と甘いと言いますか、という問題がまだ続いていることを取材で知って驚いたんですね。
昨年、原子力規制庁で、各セキュリティに関する検討会があったんですけど、
もうちょっと作業員の方が作業の際の身元調査をするべきだというような提言があったんですけど、
まだ反映されてない時期にサミットがあったので、ちょっと警戒したのかなあと思ったんですけど。
あの小出先生、私、作業員の方に「どのような身元調査があったか?」っていうのを取材して、ちょっと驚いたんですよ。

自己申告で、
・「あなたは反社会的組織に属していますか?」→「はい or いいえ」
・「あなたはテロリスト過激派に属していますか?」→「はい or いいえ」
ですよ。これ。
「はい」って丸する人いないよねえ(笑)。
さすがに私、それなんか怖いなあと思って。それは驚きました。

小出さん:
はい。ただ国家の方から見ると、その原爆材料をテロリストに渡してはいけないという風に強く思ってるわけだし、
それを一方では口実にしながら、人々を管理を強化していくという風に、もうずーっとそうやって狙ってきてるわけですからやるでしょうし、
人々の方から見れば、なるべくその国家の規制を逃れるような方法というのをやはり考えておかなければいけないと私は思います。

おしどり:
おっしゃる通りですねえ。
その身元調査に最近付け加わっているのが、
・「あなたは政治に対して批判的な心情を持っていますか?」→「はい or いいえ」
が付け加わったんですね。
だから、本当になんて言うか、国策に反対するとテロリスト扱いとほぼ同じなんだなっていう風に、その身元調査を見ても思いました。

小出さん:
そうですね。どんどんどんどん網が厳しくなってると思います。

おしどり:
なるほど、分かりました。ありがとうございました。

小出さん:
こちらこそ、ありがとうございました。