矢野宏:
今回は、元京都大学原子炉実験所の今中哲二さんにお聞きします。
今中さん、よろしくお願いします。

今中さん:
はい、こちらこそ宜しく。

矢野:
1986年4月26日にチェルノブイリ事故が発生して30年が過ぎましたが、ここに来て、ウクライナ政府は放射線が下がった立ち入り禁止区域の一部で土地の利用再開を検討し始めたというニュースが伝わっていますが、放射線量はどうなんでしょうか?

今中さん:
放射線量は、いわゆる皆さんが放射線測定器で測る分には高い所はほとんどないと思います。

矢野:
ほとんどない?

今中さん:
もちろん近くに行けばありますけども。

矢野:
主な汚染物質であるセシウムというのは、だいたい半減が。

今中さん:
セシウム137がメインなわけですけども、チェルノブイリの場合問題なのは、ストロンチウム90とかプロトニウムとかいうやつが、かなり福島に比べたら多く放出されているというのがあります。

矢野:
多く放出されている。それはどういう理由からなんでしょうか?

今中さん:
それは爆発のプロセスがちょっと違いまして、チェルノブイリはいわば原子炉そのものが爆発したような事故なんですよね。
ですから、原子炉の炉心といいますか格納燃料といいますか、原子炉の腹わたそのものが周りにまき散らされたと。

矢野:
まき散らされた。はい。

今中さん:
という風に解釈されたらよろしいかと思います。

矢野:
その後、荒廃したチェルノブイリ地域の事故の教訓ですよね。
その教訓というものが、福島の被災地では活かされたのかどうかということをお伺いしたいのですが。
除染とかインフラの復旧を進めて5年経ちましたけれども、福島の場合は。
同じように経った5年なんですけれども、避難指示区域というのが縮小されて、帰っておいでということになってますよね。

今中さん:
私の印象では、福島の場合は人々を何となく無理矢理にもう帰して、事故はおしまいというようにしたいという、なんかそういう動きがあるように感じますね。

矢野:
そうですねえ。今中さん、よく言われます除染というのはほとんど意味がないというか、移染ですよね?

今中さん:
意味がないというわけではありませんが、いわゆる掛かるお金、あと皆さんが戻ってどうするのかといったことを考えたときには、今の福島の様子というのはいったん立ち止まってどうしたらいいか考えるべきだと私はずっと言ってます。

矢野:
そうですね。今中さん、最初に入られた飯館村なんかもそうですけれども、その復興資金というのが数千億円ですか。

今中さん:
はっきり分かりませんけど、私が見るところ、人口6000の村にだいたい3000億から4000億の助成費用が入ってると思います。
そして、避難指示が解除されたので帰りましょうという人はせいぜい2割くらいだと思います。

矢野:
2割。

今中さん:
若い人はほとんど帰らない。

矢野:
はい。それだけの復興資金をかけて2割しか帰ってこない。
特に若い人が帰ってこないとなると、その村の将来というのが見えて来ないんですけれども。
それだけかける、私は意味があるのかなと思いますね。

今中さん:
その辺は、やっぱり村の人達が決めていく問題だと思いますけども。
やっぱりお金の使い方としては、それぞれ被災者の選択ですよね。
帰る人、帰らない人、移る人、やっぱりその人達の生活、復興に合わせたようなお金の使い方をすべきだろうという風に私は思います。

矢野:
そうですね。
あと、それともう一つ大きな問題があるんですが、子供達の甲状腺がんの、ならびに疑いを持った子供達というのが2016年2月15日最新の福島県の県民調査報告書で報道されたんですけども。
今、甲状腺がん及び疑いの子供達というのが163人という数字が発表されています。
それについて今中さんはどうお考えでしょうか?

今中さん:
福島の子供達の甲状腺がんが増えているということは確かですよね。
これは、誰もみんな認めてると思います。
私が強調したいのは、今やられている福島県の県民健康調査ですか。
これを福島県ではなくて国の責任で、福島だけに限らずもっと広い範囲、出来れば私は日本全体の子供達の健康状態をきちんとおさえておくようなシステムが必要だろうと思ってます。
福島の子供達がもし病気になったとして、それが事故が関係があるかどうかという議論をしようと思うと、やっぱり日本全体の子供達の健康状態というのをきちんとおさえておく必要があるんですよね。

矢野:
なるほどね。

今中さん:
やっぱり、ですから福島原発事故対策のみに限らず、もっといろんな意味で広い範囲で子供達の健康状況というのを定期的な健康診断と、それをデータベース化してみんなが使えるような形にしておく必要があるんだろうと思います。

矢野:
なるほど。今中さん、話はちょっと前後してしまうんですけども、この福島での子供達の甲状腺がん、そしてチェルノブイリ事故での子供達の甲状腺がん、その違いというのはありますか?

今中さん:
まだ、よく分かりません。
今、ですから福島の場合は5年ですよね。
チェルノブイリの場合に、だいたい4年後ぐらいから甲状腺がんが増え始めて、原発事故のせいかどうかといういろんな議論がありまして、だいたい原発事故で間違いないということになったのは10年くらい経ってからなんですよね。
ですから、もう少し時間を見ながら、きちんとしたデータを取っていくというのが一番大事なんだろうと思います。

矢野:
なるほど。先々週、西谷さんがパーソナリティを務めた時に、福島の方がたちが悪いという風に先生おっしゃられましたが、それはどういったことなんでしょうか?

今中さん:
それは、やっぱり5年経っても溶け落ちた核燃料、いわゆるデブリデブリと言ってますけれども、これがどうなっているか分からないんです。
要するに、5年経っても現場検証が出来ていないんですよね。
チェルノブイリの場合は汚染水の問題が少なかったんで、と言うかほとんどなかったんで、だいたい2年くらい経って原子炉の中にテレビカメラを入れてどうなっているのが分かりました。

矢野:
5年経っても分からないということですね?

今中さん:
福島の方は5年経っても分かりませんし、いつになったら見通しが出るのか全く分からない状態が続いてます。

矢野:
現場検証が出来ない以上、これからの対策も立ちにくいですよね。

今中さん:
廃炉にするのが40年とか言ってますけども、私も技術屋のはしくれですけども、技術屋が40年先ということは具体的な見通しがないというのと同じことだと私は理解してます。

矢野:
はい、分かりました。
厳しいご意見いただきました。
今中さんどうもありがとうございました。

今中さん:
はい、どうもこちらこそ。