西谷文和:
今日は、元京都大学原子炉実験所助教の今中哲二さんにお聞きしたいと思います。今中さん、今回から宜しくお願い致します。

今中さん:
いえ、こちらこそ宜しく。

西谷:
今中さん、今回、初のテーマはですね、チェルノブイリから30年、今と福島のこれから全編と題してお送りしたいと思います。1986年の4月26日でしたですかね? 今中さん。

今中さん:
そうですね、はい。

西谷:
チェルノブイリが原発事故を起こしましたですが、この原発事故、なぜ起きたんでしょうか?

今中さん:
どういう立場からどういう風に見るかによるんですけども、確かに日本の原発とタイプなどが違うことは確かです。

西谷:
タイプが違う。はい。

今中さん:
それで、事故の経過も違います。

西谷:
どのように違うんでしょうか? 日本の原発のタイプは。

今中さん:
日本の原発は水で冷やしてますよね? 水で中性子のスピードを緩めて、そして水で冷却するという、我々の言葉で言えば水で減速して水で冷却。

西谷:
はい。はい。

今中さん:
チェルノブイリの原発は、中性子というやつのスピードを緩めるのに、黒鉛というのを使ってます。

西谷:
黒鉛というのは、黒い黒鉛。

今中さん:
そうです。炭を固めたようなやつですけども。

西谷:
はい。先生、中性子というのは、ウランに当てる原子核の1つということで理解してよろしいでしょうか?

今中さん:
というかですね、原子炉というのは、核分裂の連鎖反応というのが起きてますよね? ウランの原子核というやつ。それで、それを核分裂を媒介してるというのが中性子なんですよね。

西谷:
中性子、陽子、電子とかありますけど、その中性子ですよね?

今中さん:
原子核というのは、陽子と中性子というのが集まってます。それは核分裂というのが起きると、中性子というのが飛び出るんですよね。

西谷:
なるほど。はい。

今中さん:
そもそも、その中性子というものをウランの原子核に当てると核分裂が起きるんですけども。

西谷:
はい。それを、その中性子を黒鉛でスピードをコントロールしていた。

今中さん:
核分裂が起きたての中性子というのは、出たばっかりの中性子というのは、非常にスピードが速いんですよ。だいたい光の20分の1ぐらい。

西谷:
そんな速い。高速。

今中さん:
そうすると、核分裂が起こしにくいんですよ。

西谷:
そうなんですか。中性子のスピードが速いと。

今中さん:
スパーッと通りぬけちゃうから。

西谷:
そういうことなんですか。

今中さん:
普通の原子炉では、それを例えば日本の原子炉だったら、水の構成物質である水素にぶつけて、水素の原子核にぶつけてスピードがだんだん緩むと。

西谷:
なるほど。

今中さん:
そうすると、原子炉の温度と同じような熱振動のスピードになって、そうすると、非常に吸収されやすくなると。核分裂を起こしやすくなると。それで、連鎖反応を維持してるもんです。

西谷:
それでですね、ほんとに疑問なんですが、なぜ格納容器がなかったんでしょうか? チェルノブイリは格納容器がないと聞いたんですが。

今中さん:
格納容器というそもそもの発想がソビエトの場合、タイプの原子炉ではありませんでした。冷却剤がなくなった時に、その冷却するシステムというのはある程度備わってましたけども、そもそもの原子炉がかなり大きいもんですから、全体を容器で囲うというような格納容器の発想はありません。

西谷:
そういうことですか。

今中さん:
はい。

西谷:
それでですね、こういう事故が起こって、移住をせまられた人は40万人という風にお聞きしているんですが、これは本当でしょうか?

今中さん:
それはですね、1986年の4月に事故が起きますよね? それで大量の放射能が周りにまきちらされて、事故の後、だいたい2週間ぐらいで周り30キロ圏の人、だいたい12万人ぐらいが避難してます。

西谷:
12万人が避難した。

今中さん:
はい。それで、ソビエトもその年の夏ぐらいには、事故処理のだいたいケリもつきましたというような報告を出してたんですけども。

西谷:
日本も似てますよね?

今中さん:
実は、大変な汚染が広範囲に広がってまして、そういう情報が初めて表に出てきたのは1989年。

西谷:
要は、グラスノスチー情報公開で出てきた。はい。

今中さん:
事故では、3年経って、初めてそういった大規模な汚染が明らかになったと。

西谷:
でも、日本もね、これ旧ソ連のこと言えませんよねえ。なんか終息。

今中さん:
全然言えないですよ。

西谷:
これ、後から出て来てますからねえ。

今中さん:
それで、大変だということになって、それで、改めて、ですから20万人以上の人が避難するということになったわけです。

西谷:
そうか。避難が2段階に分かれていたわけですねえ。

今中さん:
それで、周りの30キロ圏ね、それから3年経って明るみに出て、200キロ以上離れたところからも人々が避難したと。

西谷:
それで合計して40万人と。

今中さん:
私の勘定では40万人が避難というか、義務的な避難ですよね。

西谷:
すごい数なんですけどね。

今中さん:
移住しなくてはいけなくなったと。

西谷:
現在では30年目を迎えて、チェルノブイリの4号機なんですけれども、いわゆるコンクリートで覆う石棺ということで封じ込めてるのが、これが老朽化して、第2石棺というのができてるみたいなんですが、これで上手いことカバーできるんでしょうか?

今中さん:
そうですね、私も2年前に建設現場見に行きましたけども、一応カバーはできると思います。

西谷:
カバーはできる?

今中さん:
はい。

西谷:
ということは、これ以上の放射能の飛散は防げるということでしょうか?

今中さん:
いや、カバーをして、「一応対応年数どれくらいよ」って言ったら、「100年です」とか言ってました。

西谷:
100年。はい。

今中さん:
そのカバーしてる間に、今の石棺と中の崩れた核燃料と全部取り出して、きちんとした容器に何なりに入れると言ってましたけども、その計画は具体的にはなっていません。

西谷:
計画は、まだ具体的になっていない?

今中さん:
はい。まだ具体的にはなっていません。

西谷:
今、日本では汚染水が問題じゃないですか? 水で冷やす、そういう問題は出てないんでしょうか?

今中さん:
要するに、融けた燃料等の発熱はほとんど下がってますから。

西谷:
熱下がってるから。

今中さん

空冷で何もしなくても、空冷で冷えてると思います。

西谷:
そうか。水で冷やす必要はないわけですね?

今中さん:
そうです。はい。

西谷:
それだけ時間が経ったということですね?

今中さん:
ええ。

西谷:
一言で言って、廃炉への道のりというのはまだまだ険しいんでしょうか? チェルノブイリの場合。

今中さん:
チェルノブイリは、それこそ周り30キロ人が住んでませんし、そういうことで一応、冷えた状態で周りを覆いますから、慌ててどうこうということはないだろうと思います。

西谷:
ただやっぱり、今中さん、やっぱりこういう原発というのは事故が起きますから、やっぱり想定外のことが起こりますから。

今中さん:
はい。事故が起こりましたら、50年、100年単位で物事対応しなくてはいけないということだと思いますよ。

西谷:
基本的には、どんな原発でも起こしたらもうこうなるということですね?

今中さん:
そうですね。そういうことで言えば、福島の方が地下水汚染水の問題があるんで、たちが悪いというか大変だというのはあると思います。

西谷:
福島の方がなおたちが悪い?

今中さん:
はい。おまけに海がすぐ隣ですから。

西谷:
はい。分かりました。今中さん、ありがとうございました。