おしどり:
先日は松本のイベントに来て頂いてありがとうございました。松本子ども留学の。

小出さん:
こちらこそ、わざわざ来て下さってありがとうございました。お会いできて嬉しかったです。

おしどり:
私達もです。でも、なんかやっぱりこう京都大学の小出先生が、本当に松本に引っ越されたんだなあと思って。

小出さん:
私はもともと暑いのが大嫌いなので、できるだけ涼しい所で生活したかったのですが、私を雇ってくれたのが京都大学原子炉実験所しかなかったものですから、ずーっと大阪府泉南郡熊取町という暑い所で生活していました。でも、京都大学との雇用関係が切れれば、あとはもう自由に生きられるはずだと思いまして、涼しい所を探しました。そして、私はもともと東京生まれの東京育ちなのですけれども、東京というような巨大な街はもうまっぴら御免だと思いましたし、新幹線が通るような街も、なんかみんなミニ東京みたいなつまらない街になってしまうので、新幹線も通らない地方の小さな都会に行きたいなと思っていました。そして、山があって温泉があって、どっか良い所ないかなあと思って探したらば松本だったのです。そして、最後の理由というのが、松本市の市長を菅谷昭さんという方がやってくれていました。彼はもともと信州大学医学部のお医者さんだったのですが、チェルノブイリ原子力発電所の事故が起きた時に、すぐに現地に飛んで行きまして、子供達の甲状腺治療にあたったという方でした。もともと菅谷さんと私は知り合いでしたし、菅谷さんが市長をやって下さってるならそこに行きたいなと。そして、何よりもの理由は菅谷さんを市長に選ぶという市民がいるわけですから、私も松本市民の一人になりたいと、そんな思いで松本市にやってきました。

おしどり:
なるほど。素敵ですねえ。菅谷市長、もうこれで、この間で4選されましたもんねえ。

小出さん:
そうですねえ。

おしどり:
そうです。

小出さん:
私はこちらに来てから、菅谷さんと何回かお会いしましたけれども、もう1期やって下さいとはどうしても私からはお願いできなかったのですけれども、菅谷さんも随分悩まれたと思いますが、最後にやはりもう1期自分でやろうと思って下さったので、私はホッとして有難いことだと思っています。

おしどり:
なるほど。そうですね、本当に私達も原発事故の取材で、菅谷市長に取材に行きましたもんねえ。この間、小出先生とお会いした松本子ども留学というイベントも、福島の原発事故の後、福島の子ども達を松本で小学生・中学生まで預かろうというプロジェクトで、福島から松本に避難された方々が立ち上げたものなんですよねえ。留学という言葉が、避難とか保養とかいう言葉が使えないからこその留学ということで。私、松本に行ってびっくりしたんですけど、他の地域で原発事故とかのトークイベントをすると、なかなか場所が借りられないと。公の市立とかの県立とかの場所というのが借りにくくなっていて、申込書には原発事故とか被曝という言葉を入れずに申し込むというような事を聞いてたんですけど。松本はもう菅谷市長から、とても原発事故の事とか汚染を気にしてらっしゃるので、もうなんか皆さんこう堂々と普通に市の場所が借りられて当たり前だよという感じでビックリしてましたもんね。そうですね。ちょっと他にはないですよね。他の地域ではね。ほんとに。なので、その松本に小出先生が引っ越されたっていうのが、本当に私は納得して素晴らしなと思いました。小出先生に、最近の福島第一原発のことを伺いたんですけど。陸側遮水壁、凍土壁というのが3月31日にスイッチONして凍らし始めました。ちょうど私達、記者会見行きましたね。なんかスイッチON、拍手っていう動画を見せられて、なんだこりゃと思いながら見てたんですけれども。本当は去年の3月に完了する計画だった凍土壁ですけれど、やっと始まったということで、なんでこんなに遅れたんでしょうか?

小出さん:
いくつか理由があると思いますけれども、まず、原子力規制委員会自身が、この凍土壁という計画に否定的だったのです。だったというよりは、今もたぶん否定的だと思うのですが、何か皆さん、凍土壁ができれば汚染水問題が解決するかのようにマスコミが言ってきているわけですけれども、勿論、そんな事はないわけですし、原子力規制委員会自身も、凍土壁なんか出来たって汚染水問題は解決しない。むしろ、悪化する方に行くかもしれないという危惧を持っていて、東京電力に対してなかなか許可を出せなかったということが一つあったと思います。もう一つというか、一番根本的な理由は、要するに凍土壁ということがとてつもなく難しいというか大変な作業で、なかなか出来なかったということだと思います。

おしどり:
なるほど。規模がデカイですもんねえ。そうですね。あの範囲で凍らすのは、世界で初めてっていうことを何度も世界初のプロジェクトだと。

小出さん:
言ってみれば、桁違いに巨大な物を作ろうとしているわけで。これまで作った物とは。まず、私は出来ないだろうと思っています。

おしどり:
なるほど。私達が現場の方に取材しても、凍土壁を造っている作業員の方が、凍結管を埋め込む方々が「無理じゃないか」ということをよくお話されてましたもんねえ。

小出さん:
ああそうですか。

おしどり:
はい。

小出さん:
たぶん現場をよく知ってられる方は、難しいだろうなぐらいのことは、きっと思っているはずだと私は思ってきました。

おしどり:
はい。もうおっしゃる通り。でも、その国のお金でやっているので、凍土壁を造っても、そして撤去する時もどちらにしろお金が出るので、まあやるんだろうなあとは自分達だけが被爆してしまって損だねっていう話をよくされてるもんねえ。

小出さん:
そうですねえ。本当に作業にあたってる方々は、被爆しながらやってるわけですし、私はいずれにしても多分できないと思っているわけですが、作業員の方々の被爆、努力というものは徒労に終わってしまう可能性が高いわけで、こんな事はもともとやってはいけない事だと思います。

おしどり:
そうですねえ。だって、その作業をするだけで被爆を受けるわけですものねえ。

小出さん:
勿論です。

おしどり:
もう本当そうだよねえ。この間、中島建設さんが、他の記者さんが「一番被爆した方はどれぐらいですか?」っておっしゃった時に、「まあ大体、みんな年40ミリ以下で管理していて、まあ最高は、でも言っても38ぐらいです。」みたいな事をおっしゃったじゃないですか。でも、記者会見で、「最高40で管理してるのに、それを超えた人が出てしまった。42ミリの人がいます。」みたいな事を発表したにも関わらず、そういう事をおっしゃるので。なんか自分からは都合の悪いことは言わないという感じでしたよね?私が取材したところ、凍土壁を作業された方で一番被爆された方は、2年で66ミリの被爆だったんですよ。っていう事を鹿島さんに突き付けたら、「あっ、すいません。おっしゃる通りです。すいません。それを自分から言わなくて。」みたいな事をおっしゃるんですけど。本当に被爆されている方の話とか、都合の悪いことは、もうご自分から記者会見でもおっしゃらないので、情報が全然出てこないですよね。ちょっと記者会見の意味を成してないですねえ。小出先生、それで、この凍土壁の汚染水対策っていうのは、今後、6年を目途ということですけど、これは無事に進んでいくと思われますか?

小出さん:
全く思いません。まこさんやケンさんはよくご存知のように、この凍土壁は深さ30メートルまでの土を長さ1.5キロに渡って凍らせようとする、そういう計画なのです。しかし、地下水というのは、一定のスピードでどこでも流れているわけではなくて、ほとんど流れていない所もあるし、猛烈なスピードで流れている所もあるわけですから、実験室でやるように土が凍るなんてことはないわけですし、おそらく全体が凍るということは私はないと思っています。その上に、その凍土壁を維持する為には四六時中、冷媒というマイナス30度の液体を流し続けなければいけないわけですし、天気が途絶えたら終わり、パイプが壊れても終わり、パイプが詰まっても終わりというものですから、長い間、維持できるなんてことは到底有り得ないと私は思いますので、遠くないうちに、やはりこれはダメだったと言い出すだろうと思っています。

おしどり:
でも、そんな凍らし続けるっていうことは、お金も随分使いますよねえ。

小出さん:
はい。たぶん年間数十億円というお金になるんだろうと思います。

おしどり:
なるほど。汚染水対策が陸側遮水壁、私もこれ無理じゃないかと思うんですけど、これが無理であれば、あとどういう策が残ってるんでしょうか?

小出さん:
汚染水対策でやるべきことは2つあります。一つは、これまで溶け落ちた炉心に向かって水を入れ続けてきているわけですけれども。冷却の為ですねでも、それをまず止めるということが必要だと思います。私はもう何年も前から提案していますけれども、水を入れてしまいますと、汚染水がどんどんどんどん増えてきてしまって、いずれ破綻するという所に追い込まれますので、水での冷却を諦めるということをまずやらなければいけない。場合によっては、金属で冷却する。場合によっては、空冷の可能性を探ってみるということもやるべきだと思います。それから、もう一つは地下の遮水壁ですけれども、私は棟土壁は出来ないと思いますので、やはり、初めからコンクリート、鉄、あるいは、場合によってはねん土ということもあるかもしれませんけれども、そういう物理的な物体で水を止めるということを、やはりやるしかなくなると思っています。

おしどり:
なるほど。分かりました。小出先生、ありがとうございます。

小出さん:
こちらこそありがとうございます。

おしどり:
また、今後もずーっと宜しくお願いします。ありがとうございました。