2017.12.19

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次の世代にそっと手渡したい
〜尾道向島の帆布と藍のにおいが指し示す大切なこと〜

PERSONALITY

アーサー・ビナード

GUEST

新里カオリさん(立花テキスタイル研究所・代表)

新里カオリさんは、尾道向島で「立花テキスタイル研究所」を設立し、特産物である帆布を使って、バッグやファッション小物などを作っています。帆布とは、帆かけ船の帆に使われる布です。かつては軍需産業としても重宝された地域の伝統産業でしたが、安価な化学繊維に追われて、尾道にある帆布工場の数は減少の一途を辿っています。

その中で、新里さんは消えゆく地域の文化に新しい息吹を吹き込むべく、その土地にある材料、それも廃棄物として捨てられるようなものにも着目して、白い帆布に味わい深い染色を施し、おしゃれな商品を生み出しています。

染色の原料となるものには、藍や柿渋など伝統的な技法にもこだわりますが、、それに加えて造船工場で出る鉄屑、農家が剪定して残った枝、家具工場の廃材など、その土地の「足元」にあるさまざまなものを利用するのだといいます。

埼玉県ご出身の新里さんは東京の美大を出てから、ふつうに現代のファッションやインテリアデザインなどの道に進むはずだったといいます。それが、旅先の尾道に根を下ろし、地元の帆布と染色にとりつかれたわけとは?

今回の収録でとても印象的だった新里さんの言葉があります。美しい藍色を出すためには、藍のかめのお守りがとても難しく大変なのですが、温度・PHなどは最初、正確に計器で計りながら仕事をしてきた。しかし永く続けるうちに、「間に数字を入れない方が、信頼関係が築けることに気が付いた」といいます。においや味、五感で感じるものを信じながらのお仕事、もしかしたら、人ならではの力が、今ほんとうに必要な時代なのかもしれません。なぜなら、合理的なものだけが経済を動かし、結果、文化を消し去る。尾道向島の帆布がこれからも世代を超えて残っていく意味を、今一歩踏み込んで考えてみたいと思うのです。
どうぞお楽しみに!

立花テキスタイル研究所のホームぺージ  https://tachitex.com/