2017.4.18

055

『焼却』が文化を消し去る。
ゴミになりそうになった廃校を
空間絵本に変えた絵本作家の平和論。

PERSONALITY

アーサー・ビナード(作家)

GUEST

田島征三さん(絵本作家・美術家)

久々にアーサー・ビナードがナビゲートする市民のための自由なラジオ“Light Up!”。今回は、小さくて不器用な者たちに優しい視線を向けながらも、読む人に力強いパワーを与えてくれる絵本作家、田島征三さんを訪ねました。

「落ちこぼれみたいな動物、あまり走るのも早くない、飛ぶのも上手くない、そんなものを描くのが好きなんです。」子どものようないたずらな笑顔を見せながら、インタビューに応えてくださった田島征三さん。

彼の作品の原点は、戦争の記憶でした。5歳のとき疎開先で終戦を迎えたあと、ろくに食べるものがない戦後のくらしを高知の山奥で過ごします。国破れて山河あり、生き物たちと対話しながら、生かされている自分に気づく中、自然と「機械類とか自動車とか描くのが下手な画家」になります。それらは書いたとしても「鳥のような、動物のような、虫のようなもの」になってしまう。彼の作風は一貫して、子どもが落書きしたようであったりします。デッサンをせずに一気に書き始めるという田島さんの作品には、じんわりと伝わる温かさと、社会に対する確かなメッセージが潜んでいるのです。

かつて田島さんが移り住んだ東京都西多摩郡にある「日の出の森」での暮らしからも、たくさんの作品が生まれました。しかし1989年、その豊かな自然を取り壊し巨大なごみ処分場が建つ計画が持ち上がり、田島さんはごみ処分場建設の反対運動を始めます。そこで田島さんは、ただ住民運動を繰り広げたのではなく、その運動を「文化」ととらえ、ユニークな活動を続けて来られました。残念ながら日の出の森は、ダイオキシンなどの有害物質に汚染された化学工場に変わってしまいましたが、田島さんたちが遺したものは、確かな財産となって次の世の中につながっていると思います。

その「文化」の継承のひとつの形が、「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」です。この美術館は、新潟県十日町市の廃校になった小学校をそのまま利用して、全体を立体絵本として田島さんがデザインしたものです。ここからは、人の息づかいがたくさん残っているものが「ごみ」として焼却されるのは偲びないという温かな思いが伝わってきます。自然とのハーモニーをそのまま活かしながら、ユニークな作品の数々にふれることができるこの美術館は、動植物たちと同じように雪深い冬は冬眠(休館)し、4月29日、春の訪れとともにまた再開します。番組では、この「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」の魅力についてもじっくりと伺いました。

「細胞が躍る!」と言いながら制作中の絵本「虫けら君の旅」は、ひどい目にあってもあきらめない多足類の「虫けら」が果敢に旅を続けるものがたりだとか。がんを患うも抗がん剤を断った田島さんが、伊豆の潮風とこごみを好み、自然から力をもらって元気を取り戻したエピソードに重なり、また何よりも今、私たちが、この息苦し社会の中で、どこを見つめて歩いて行けばいいのか、そんなことが少しだけ見えてくる時間になりました。


田島征三さん 公式ホームページ

鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館

田島征三さんの絵本